インプラント埋入のあと、顎の骨とインプラント体のオッセオインテグレーション(骨とインプラント体の結合)を得ることを確認し、最終的にセラミッククラウンなどの被せ物を装着して噛む機能を取り戻します。人工歯が装着されたら、これまで食べ辛かった食材もしっかり噛むことができるため、食事の楽しさや美味しさを実感できることでしょう。
しかし、インプラント治療直後は何でも食べられるわけではありません。基本的には抜歯後の過ごし方と似ていますが、これまでなかった部分に人工歯根が埋め込まれることになります。外科手術によって失った歯の部分の顎の骨に人工歯根を埋め込む治療を終えたあとは、麻酔の効果がまだ持続している状態です。
インプラント治療を行うために、歯ぐきを切開して顎の骨にインプラントを埋め込むという工程が必要なため、通常の抜歯と比べると治療時間も長く、内容も外科手術という特殊なものであることから、手術直後の食事には気を付ける必要があります。
インプラント手術は局所麻酔をしてから行い、手術終了後も2時間ほどは麻酔の効果が効いており、痺れたような感じや感覚が鈍った状態が続きます。内頬や舌など粘膜を噛む恐れがあるため、麻酔の効果が切れるまでは食事は控えたほうがよいでしょう。熱い飲み物も、やけどの恐れがあるため十分注意してください。
歯ぐきを切開した部分は糸で縫合してあるため、傷口に食べ物がひっかかりやすくなります。糸を抜くまでは歯ぐきが治癒しておらず、腫れやすくなっています。何らかの拍子で糸が抜けてしまうと傷口が開き、細菌感染してしまう恐れがあります。またインプラントを埋入した部分に負荷がなるべくかからないよう、反対側の歯で噛むようにして下さい。
インプラント体が顎の骨としっかり結合し、セラミッククラウンなどの人工歯が装着されるまでは、固いものはなるべく控えたほうがよいでしょう。例えばフランスパンやアーモンドなどのナッツ類、固いおせんべいなどは歯に負担がかかりやすい食べ物です。また飴やアイスコーヒーなどに入っている氷もできるだけ噛まないようにしましょう。
辛い物や香辛料などの刺激物も、傷口に影響を与えてしまうことがあります。できれば糸を抜くまでは控えておいたほうが無難です。お酒も手術後は控えるようにして下さい。通常の抜歯もそうですが、アルコールを摂取すると血流が良くなり、血が止まりにくくなります。できれば手術後1週間くらいはアルコールを控えたほうがベターです。
インプラント治療後は、歯ぐきの腫れが引くまで食事の内容に気を付けて過ごしていただくとともに、生活習慣にも気を付けたい時期でもあります。
その代表が、喫煙習慣です。喫煙は、インプラントの成功を大きく左右します。煙草に含まれるニコチンは、血管を収縮させる作用があります。そのため顎の骨とインプラント体の結合に少なからず悪影響を及ぼす可能性があります。
そして何よりも、喫煙習慣は歯周病の悪化につながってしまいます。歯を失ってしまった原因が歯周病の場合、タバコを吸うことで歯周病がさらに悪化してしまいます。インプラント治療後はインプラント周囲炎に最も注意しなければいけない代表的なトラブルです。インプラント周囲炎は、歯ぐきの腫れや出血など、歯周病に似た症状を引き起こしてしまいます。
症状が悪化すると、インプラントを支える顎の骨が吸収され、インプラントを支えられなくなってしまいます。その結果インプラントがグラついたり、最悪の場合、インプラントが抜け落ちてしまうこともあります。
インプラント手術後は食事だけでなく、生活習慣にも気を付けて過ごすようにして下さい。特に喫煙は、お口の中にも悪影響が出てしまいます。体とお口の健康のためにも、できれば禁煙に取り組んでいただくことをお勧めします。
もうひとつ気を付けたいのが、お口の中の衛生管理です。インプラントを埋入した部分は糸で縫ってあるため、歯磨きがしにくいと思います。しかし歯磨きがきちんとできていないとプラークが溜まり、歯周病やインプラント周囲炎を引き起こしてしまうため、糸を抜かないように気を付けながら、口腔内の衛生環境を維持するようにしてください。