浅井延彦
上荻歯科医院 院長
日本歯科大学を卒業し、上荻歯科医院の院長を務めている。豊富な知識と経験を持ち、日本口腔インプラント学会、顎咬合学会、日本メタルフリー歯科学会に所属し、最新の歯科医療技術の研鑽に励む。
コラム喫煙は健康に悪い——そんなことは誰もが知っていますが、「歯周病のリスクが非喫煙者の2〜6倍も高まる」という衝撃の事実はご存じでしょうか?
タバコの煙は、口腔内環境にさまざまな悪影響をもたらし、自覚症状が出にくい“隠れたリスク”となっています。
この記事では、なぜ喫煙で歯周病が増えるのか、具体的なリスクと今から始められる対策について詳しく解説します。
喫煙と歯周病には深い関係があり、多くの研究でその危険性が明らかになっています。
日本人の歯を失う原因の第一位は「歯周病」。中でも喫煙者は、歯周病の発症・進行が著しく早いと言われています。
・血流の悪化
タバコに含まれるニコチンなどの成分は血管を収縮させ、歯ぐきの血流を著しく悪化させます。すると、歯ぐきの細胞に酸素や栄養が行き渡りにくくなり、組織の修復能力が低下。
・免疫力の低下
口腔内の免疫細胞も働きが悪くなり、歯周病菌と闘う力が落ちてしまいます。
・プラークと歯石が付きやすくなる
タールの付着や唾液の機能低下で汚れが残りやすく、細菌の温床に。
・出血や炎症が「目立ちにくい」
実は喫煙者は歯ぐきの炎症や出血が外から見えづらく、気付かぬうちに重症化しやすいことが分かっています。

喫煙者の歯周病は「気づきにくく、治りにくい」のが特徴です。そのカラクリを詳しく見てみましょう。
・歯ぐきの炎症に気づきにくく、プロケアを受けるのが遅くなる
・歯ぐきや骨の組織がダメージを受けやすい
・治療の効果が非喫煙者より出にくく、再発しやすい
このため、喫煙を続けている限り、どれだけケアをしても歯周病の根本的な改善が難しくなります。
・口臭や歯の着色、舌の表面の“ヤニ”
・口内炎や粘膜の炎症頻発
・インプラントや入れ歯のトラブルが起こりやすい
・口腔がん発症リスクの上昇
歯周病予防はもちろん、全身の健康のためにも喫煙は要注意です。

喫煙習慣がある場合、自覚症状が少なくても半年に1回は歯周病チェックを受けましょう。
プロによるクリーニングや歯ぐき状態の診断はリスクの早期発見に役立ちます。
・歯ブラシだけでなくフロス・歯間ブラシで徹底除去
・マウスウォッシュの活用やうがいも効果的
・喫煙後は特に口腔内ケアの質をUP
タバコを吸うほど、ケアは“念入りに”が鉄則です。
歯周病リスクを減らす最も有効な手段は「禁煙」です。
・歯科医院での禁煙外来や相談
・家族や同僚のサポートを得る
・禁煙グッズ(ガム、パッチ)なども併用
健康な口元のために、少しずつでもチャレンジを始めましょう。
タバコがもたらす歯周病の問題は、見た目や息のニオイだけでなく「一生の歯」に大きく関わるリスクです。
気になる変化がある方は、今すぐチェック&ケア、そして禁煙への一歩を踏み出して、大切な笑顔と健康を守りましょう。